序論史十年の後に
師範の童話会は、
鹿大の輝く草創の日に
【ひこばえ】として
このサークルに転生した。
その日、このサークルは、
われらのからだを暖め、
その全存在を新鮮にする
健康な意欲にあふれた。
ひ こばえの根の大地には
不毛の緑野がひろがっていた。
少数ベテランの独善を乗り越えて
サークルは学生大衆のものとなった。
ふくれあがるエネルギーは、
山峡の山々に灯をかかげ、
岬の崖から海を渡り、
島から島にその旗をかざした。
子どもたちは歓呼し、
手のしびれるほど別れを惜しんだ。
子どもたちの小さな胸に
精神の微風はいく返りも吹き返すだろう。
子どもたちの喜びのゆすりに
人間の幸福と平和への思いをたしかめる。
子どもたちの見つめて動かぬ瞳に
真実の感動をたしかめる。
この子どもたちの共感の上で、
民衆と祖国へのわれらの愛をたしかめる。
若き世代のこのサークルは、
自発と親愛のパトスに脈打ち
そのロゴスは高邁のヒューマニズムを貫く。
そして、技術そのものとなる【からだ】と
そこに新しい世代の典型が、
がっしりとその骨格を整える。
十年
この序論史の後に展開するもの
十年の歩みは
すでに伝統の重量感を持ち始めた。
伝統はエネルギーの巨塊のごとく、
われらの背後から突き動かしてくる。
そこには、
われらを突きのめす敵意と誇りがひそんでいる。
１９５９．１０．１５